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節税の可能性も!簡易課税とは? インボイス制度での影響についても解説

公認会計士・税理士の古谷です。今回は簡易課税制度についてメリットやデメリット、要件に加え、インボイス制度開始による影響についても解説していきます。


目次


① 簡易課税とは

② 簡易課税の要件

③ 簡易課税のメリット

④ 簡易課税のデメリット

⑤ 簡易課税を選択するかどうかどう決めればいいの?

⑥ インボイス登録による影響



① 簡易課税とは


簡易課税とはざっくり言うと納める消費税の金額の計算を簡単な方法でできますよという制度です。本来消費税の計算では売上にかかる消費税から仕入や経費などにかかる消費税を差し引くことで納める消費税額を算出することになります。しかしこの原則的な方法の場合、売上や仕入・経費の中には消費税の対象となるものやならないものが混在しているため正確に区分することが求められ、非常に煩雑となります。簡易課税では決められた計算式・割合を使って消費税額を求めるため、仕入・経費の消費税区分を判定する必要がなくなるため負担が軽減されます。


以下、原則課税と簡易課税の計算式となります。




また上記計算式のみなし仕入率は業種によって定められており、以下の通りです。

出典:国税庁「 No.6509 簡易課税制度の事業区分」



では簡単な例で原則課税と簡易課税の計算をしてみましょう。






















このようにどちらの方法を使うかによって納める消費税額にも違いが出てきます。設例では簡易課税の方が消費税額は小さくなりましたが逆になるケースもあるので注意が必要です。


② 簡易課税の要件


簡易課税は先述した通り、消費税の計算を簡便化することで事務負担を軽減することができ、また場合によっては節税できる可能性もあります。

しかし簡易課税はどの事業者でも適用できるわけではなく、以下の2つの要件を満たす必要があります。


・基準期間の課税売上高が5,000万円以下であること


基準期間とは2期前のことを指し、個人事業主の場合は2年前の売上となります。


・「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出していること


簡易課税の適用を受けるためには、適用を受ける会計期間の初日の前日までに上記の届出を税務署に提出することが必要となります。

例えば個人事業主で2024年1月1日~2024年12月31日の年度から簡易課税を適用する場合には2023年12月31日までに届け出が必要となり、法人で2024年4月1日~2025年3月31日の年度から簡易課税を適用する場合には2024年3月31日までに届け出が必要となります。


③ 簡易課税のメリット


簡易課税のメリットは大きく以下2つが挙げられます。


・事務負担の軽減となる


 概要で述べたように本来原則的な方法で計算を行う場合にはすべての仕入や経費取引に関する消費税区分を正確に区分する必要があり、手間がかかります。しかし簡易課税の場合には仕入・経費に関する消費税を正確に区分する必要がないため、事務処理上の手間が削減できます。


・節税の可能性がある


またもう一つのメリットとして節税の可能性が挙げられます。原則的な方法で算出した仕入等にかかる消費税額よりも簡易課税のみなし仕入率を使って算出した控除額のほうが大きい場合には簡易課税の方が納める消費税額が少なくなります。


④ 簡易課税のデメリット


・納める税金が増えてしまう可能性がある


 これはメリットで述べた逆のケースですが、原則的な方法で算出した仕入等にかかる消費税額のほうが簡易課税のみなし仕入率を使って算出した控除額よりも大きい場合は簡易課税を適用することで納める税金が大きくなってしまいます。特に設備投資や支出が多い場合にはこの可能性が大きくなりますので要注意です。


⑤ 簡易課税を選択するかどうかどう決めればいいの?


簡易課税を選択するかどうかは結局どちらの方が納める消費税が少なくなるかで決めることになります。原則課税で計算される仕入にかかる消費税が簡易課税で計算する控除額よりも大きい場合には手間がかかったとしても原則課税の方を使うべきですし、逆の場合には簡易課税を選択する方が望ましいです。また同じくらいの額が見込まれる場合には手間の観点から簡易課税を選んだ方がよいと思います。

とはいえご自身で判定するためには消費税に関する知識が必要となりますので税理士に相談することをおすすめします。


⑥ インボイス制度の影響


インボイス制度が開始されたことにより消費税の原則課税を適用している場合には今までよりさらに細かい消費税区分判定が求められ、また仕入先から入手した適格請求書を保存することも必要となります。

しかし簡易課税の場合には先述の通り、仕入に関する消費税区分の判定が不要であり、また適格請求書の保存も仕入税額控除の要件ではないため、より原則課税との手間に差が広がったといえるでしょう。


今回は簡易課税について解説をしましたが、実際に簡易課税を使うかどうかご自身で判断に迷う方は是非一度ご相談ください。初回相談は無料となります。

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